なぜ“手動リセット”が必要なのか?セーフティリレーユニットPSR-MCシリーズで学ぶ安全設計の基本

「装置は安全に停止した。。。でも、なぜ勝手に再起動してはいけないのか?」
セーフティリレーにおける“リセット方式”は、安全設計の根幹を左右する重要な要素です。

本記事ではそういったお悩みをPhoenix ContactのセーフティリレーユニットPSR-MiniにおけるPSR-MCシリーズで紐解きます。

本記事では一般的な理解を目的として記載しているため、関連する規格及び製品仕様(データシート、マニュアル)はご本人自身で必ずご確認ください。

また本記事は2026年6月30日時点での執筆のため、今後の製品ラインナップや製品名が変わる可能性がございますのでご了承をよろしくお願いいたします。

セーフティリレーにおけるリセットとは何か

セーフティリレーにおける「リセット」とは、安全回路が一度トリップ(遮断)した後に、再び出力を有効化して機械動作を再開させるための操作を指します。
(「リセット」と言わずに「リスタート」と呼ばれることもあります)

もう少し具体的に言うと、非常停止ボタンの押下や安全ドアの開放などにより、安全回路が動作すると、セーフティリレーは内部の安全出力(例えば安全接点)を強制的にOFFにします。
この状態では、たとえ危険要因が解消されたとしても、自動的に機械が再起動するとは限りません。

ここで必要になるのが「リセット」です。
「リセット」には前述のとおり、「自動(Automatic)」と「手動(Manual)」の2種類の方式があります。

手動リセットとは?

手動リセットとは、安全回路が一度作動して停止した設備を再起動する際に、人が意図的にリセット操作(通常は押しボタン)を行うことで、安全出力を復帰させる方式です。

主には、次のようなケースです。
・非常停止ボタンが正常状態(リリース)に戻ったとき
・安全ドア(ガード)を閉めた後も内部の状態を確認したいとき

安全装置(非常停止、ガードスイッチなど)が正常状態に戻ったとしても、それだけでは機械は再起動せず、別途リセット操作が必要になります。

手動リセットの基本的な考え方

手動リセットの本質は単なる操作ではなく、

「安全が成立していることを、人が確認し、再起動の意思を明確にする」

というプロセスにあります。

つまり、

  • 安全信号の復帰(セーフティ入力)
  • 再起動の許可(リセット操作)

をあえて分離することで、意図しない再起動を防止する設計になっています。

なぜ手動リセットが推奨されるのか

手動リセットが多くの設備で推奨される理由は、主に「人の確認プロセス」を組み込める点にあります。

特に非常停止ボタン回路では下記の安全規格の記載通り必須条件となっています。

■ ISO 13850(JIS B9703) ”非常停止機能”
「非常停止の解除(リリース)は、機械の再起動を引き起こしてはならない」

という重要な原則が示されています。

※詳細記事は下記を参考にしてください。
最適な非常停止スイッチの選択 | Automation Tips | Phoenix Contact

手動リセットの特長、「リセットボタンの立下りを見る」

手動リセットによる復帰条件の特長として「リセットボタンの立下りを見ることができる」という点です。
※製品によっては立上りのみの検出もあるため、各々の製品のデータシートをご確認ください。

立下りの具体的なプロセスは、

押す → 離す(この離した瞬間でリセット成立)

つまり ON → OFF の信号状態を見ている

という動作です。

これによるメリットとしては下記のポイントがあります。

◆押しっぱなし(短絡)の検出

立下り検出(ON→OFF)の場合は下記の状態では勝手に再起動しないような仕組みが可能です。
・ボタンが故障して押しっぱなし
・意図せず短絡
・リセットボタンから手(指)を離していない

また、リセットボタンを押している間は再起動しないため、その間にやはり動作を再開しない(例えば非常停止ボタンを再度押す)ということも可能になります。

手動リセット回路の例

◆PSR-MC30、非常停止ボタンでの安全回路の場合

自動リセットとは?

自動リセットとは、セーフティリレーにおいて安全条件が回復した時点で、人の操作を介さずに自動的に出力を復帰させる方式を指します。

例えば、次のようなケースです
・安全ドア(ガード)を閉める
・ライトカーテンの遮断が解除される

これらの安全入力が正常状態に戻ると、セーフティリレーは自動的に安全出力をONにし、設備は再起動可能な状態(または即再起動)となります。

自動リセットのメリット

自動リセットは一見シンプルですが、適切に使えば大きな利点があります。

① 操作の省略による効率向上

リセットボタン操作が不要になるため、

・オペレータの手間削減
・作業サイクルの短縮
・自動化ラインとの親和性向上

といった効果が得られます。

特に、下記の条件では有効です。
・無人運転ライン
・頻繁に安全装置が動作する工程(ドアの開閉など)
・軽微な停止が多い設備


② システムのシンプル化

手動リセット回路が不要になるため、

・配線の簡素化
・配線工数の削減
・設計コスト低減

といったメリットもあります。

また手動、自動対応製品はそれらを切り替えるために必要な何か物理的なスイッチなどがあるわけではありません。

基本的には配線方法や電圧の取り方が異なることが多いため、各シリーズごとにその違いについて紹介をいたします。

自動リセットのリスク

自動リセットは便利である一方で、安全上の本質的なリスクを含んでいます。

① 意図しない再起動

最大のリスクは、

人が再起動を認識・許可する前に機械が勝手に動き出してしまうこと

です。

例えば下記のような状況で設備が突然動くと、状況によっては重大災害に直結します。

・作業者がまだ設備内部に存在している
・点検作業中に安全装置が復帰する
・そもそも誰も再起動を意図していない状態


② “安全=再起動可能”と誤認してしまう構造

自動リセットでは、

安全条件が成立した = 再起動してもよい

とみなす仕組みになります。

しかし実際には、

・周囲の状況確認
・作業員の退避確認
・作業完了の確認

といった判断が必要です。

つまり、

「安全信号」と「再起動の許可」は本来別物である

にもかかわらず、それを一体化してしまう点が本質的な危険です。

③ ヒューマンエラーの吸収ができない

手動リセットでは、

・ボタンを押す
・周囲を見る
・再起動を意識する

という「確認行動」が自然に組み込まれます。

一方で自動リセットでは、

・判断プロセスが省略される
・人の確認が介在しない

ため、ヒューマンエラーに対して脆くなります。

例えば:

  • 作業者がまだ設備内部にいる
  • 点検作業中に安全装置が復帰する
  • 誰も再起動を意図していない状態

このような状況で設備が突然動くと、重大災害に直結します。

自動リセット回路の例

◆PSR-MC30、非常停止ボタンでの安全回路の場合

手動リセット回路と比較してわかる通り、リセットボタンがありません。
またMC30では配線する端子箇所で切り替えていることが分かります。

まとめ

特にPhoenix ContactのPSR-MCシリーズでは、手動・自動リセットのどちらにも対応できる機種が複数ラインナップされています。

手動、自動において配線で柔軟にできるため、設計意図がそのまま安全レベルに反映されますので、「その安全回路は本当はどうあるべきなのか?」というのを改めて確認できるかと思います。

手動リセット、自動リセットを安全面を最大限考慮した上で、適材適所で使い分けることが理想で、すべてを「手動」、すべてを「自動」ということではありません。

次回以降では各PSR-MCシリーズにおける手動、自動リセットの配線方法の特長を紹介いたします。

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