PLCnext を使用した Modbus/RTUインターフェース による電力モニタリング

 近年、脱炭素化のニーズの高まりから、省エネによるエネルギー効率の向上と、温室効果ガス排出量の削減という観点から、電力モニタリングによりエネルギー使用状況を正確に把握し、無駄な電力使用を削減することで、製品の生産過程における CO2 排出量を削減することが求められています。また、欧州ではカーボンフットプリント(CFP)によって、製品単位の温室効果ガス排出量を見える化する仕組みを作り、脱炭素・低炭素製品(グリーン製品)が選択されるような市場を創り出すための基盤を構築しています。

 これに対応して、設備や機械の使用電力をモニタリングする仕組みとして、従来の市販の Modbus/RTU 通信インターフェースを持つ電力モニタのデータを PLCnext を使用してデータをリアルタイム処理して、イーサネット通信で工場サーバ、クラウドにデータを送信することで、省スペース化、コストダウン を実現する方法について説明します。

図1.電力モニタリングのクラウド監視例
目次

従来の電力モニタリング機器構成の課題

 電力の使用量を計測するには、電力モニタ(電力量計)を使用します。使用する電力モニタは、計測したい電力の種類(単相電力、三相電力など)や、必要な機能(通信機能、データロギング機能など)によって異なります。また、電力モニタは、通常、電力が供給される配電盤に設置されます。

 市販されている電力モニタは、分散設置を考慮した多種多点計測に対応して入力点数拡張が可能な製品があり、外部装置との通信インターフェースとして Modbus/RTUインターフェース対応の製品が多く市販されています。

 通常、これらの製品を使用して電力データを工場サーバ、クラウドにデータを送信するには、電力モニタの Modbus/RTUインターフェースでゲートウェイ(または データロガー)に電力データを集約し、さらに上位のデータサーバに送信した後にイーサネット通信(Modbus/TCP 等)で工場サーバ、クラウドに電力データを送信します。ここで、市販の電力モニタを使用して電力データを工場サーバ、クラウドに送信するシステムの構築には、次の課題が考えられます。

  1. ゲートウェイ、データサーバの複数機器を経由するため、各機器で設定が必要
  2. 複数機器のための設置スペースが必要
  3. 設置コストアップ

 次に、PLCnext を使用してこの課題を解決する方法を説明します。

図2.従来の電力モニタリング機器構成

PLCnext による電力モニタリング

 市販の電力モニタを使用して電力データを工場サーバ、クラウドに送信するための機器構成として、ゲートウェイ、データサーバの複数機器を経由する必要とするところを PLCnext を適用した構成によって、省スペース化、設置コストダウンを図ることができます。

 その具体的な構成方法について、次の2方法を説明します。

  • PLCnext と シリアル通信モジュール
  • PLCnext と プロトコルコンバータ

PLCnext と シリアル通信モジュール

 この構成は、従来構成のゲートウェイとデータサーバを PLCnext と シリアル通信モジュールに置き換えた構成になります。この構成により、電力モニタの電力データをシリアル通信モジュールで受け取り、そのデータを直接 PLCnext に取り込んで、PLCnext のイーサネットポートから工場サーバにデータを送信することが可能となり、従来の複数機器の構成を1つにまとめることができます。

 PLCnext は、I/Oモジュールとして Axioline シリーズ の Axioline F、Axioline SE の I/Oを適用することができます。Modbus/RTUインターフェースが可能な RS485通信対応のシリアル通信モジュールとしては、次の製品があります。

 基本構成例として、シリアル通信モジュールに AXL F RS UNI 1H を使用した構成図を、図3に示します。

図3.PLCnext と シリアル通信モジュールの基本構成

 また、電力モニタのグループを2セット、4セットに拡張した場合の構成を、図4、図5に示します。これは、電力モニタのグループ数だけ、シリアル通信モジュールを2台、4台増設する構成となります。

図4.PLCnext と シリアル通信モジュール (2セット) の構成
図5.PLCnext と シリアル通信モジュール (4セット) の構成

PLCnext と プロトコルコンバータ

 この構成は、従来構成のゲートウェイとデータサーバを PLCnext と プロトコルコンバータ に置き換えた構成になります。この構成により、電力モニタの電力データをプロトコルコンバータで受け取り、Modbus/RTUインターフェース から Modbus/TCPインターフェースに変換し、Modbus/TCPインターフェースで PLCnext に電力データを取り込み、イーサネットポートから工場サーバにデータを送信することが可能となります。これにより、従来のゲートウェイをプロトコルコンバータに置き換えることで、省スペース化、コストダウンを図ることができます

 Modbus/RTU ⇔ Modbus/TCP プロトコルコンバータは、シリアルポートの数に応じて、以下の製品があります。

 基本構成例として、プロトコルコンバータに GW MODBUS TCP/RTU 1E/1DB9 を使用した構成図を、図6に示します。

図6.PLCnext と プロトコルコンバータ の基本構成GW MODBUS TCP/RTU 1E/1DB9

 また、電力モニタのグループを2セット、4セットに拡張した場合の構成を、図7、図8に示します。これは、電力モニタのグループ数に応じて、プロトコルコンバータのシリアルポート数に合う製品を選定した構成となります。

図7.PLCnext と プロトコルコンバータ(2セット) の構成GW MODBUS TCP/RTU 1E/2DB9
図8.PLCnext と プロトコルコンバータ(4セット) の構成GW MODBUS TCP/RTU 2E/4DB9

まとめ

 市販の Modbus/RTU 通信インターフェースを持つ電力モニタのデータを PLCnext を使用してデータをリアルタイム処理して、イーサネット通信で工場サーバ、クラウドにデータを送信することで、省スペース化、コストダウン を実現する方法について説明しました。

 データをクラウドに送信する場合は、さらに 産業用 IoT/M2Mルータ EW50 を適用することにより、クラウド連携が可能となります。EW50 は、Modbus/RTU ⇔ Modbus/TCP のプロトコルコンバータを内蔵しているので、上記の PLCnext と プロトコルコンバータの基本構成のプロトコルコンバータ部分を EW50 に置き換えることができます。クラウド接続をお考えの場合は、こちらの製品構成もご検討ください。

図9.PLCnext と EW50 の基本構成
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